魏の曹操と夏侯淵は、それこそ竹馬の友である。そして、親同士がそうであれば、息子たちも知らぬ仲のはずがない。
「なぁ。若~」
戦場時の重たい鎧など一切身につけず、青緑の衣を身にまとっている夏侯覇は長椅子にもたれかかると、けだるい声を上げた。
「俺たちも、けっこう年取ったよなぁ」
「・・・・・・・・夏侯覇よ」
眉間にしわを寄せながら、木簡に目を通す曹丕は怪訝な表情を向ける。
「何しに来たのだ、茶を飲みに来たのなら出ていけ」
「えー!お茶だって出してくれてないじゃん!俺はさぁ、若のことを思ってだなぁ。てか、今、俺と二人っきりなんだよ!?仕事あとでいいじゃん!俺と若の仲じゃん!!」
不満を言う子供のような夏侯覇にはぁとため息をついて曹丕は外で宮女に茶を用意するように言った。
「それを飲んだら、帰れ」
「ヤダ。だって俺、若と話ししに来たんだもん」
飲茶が用意されると、夏侯覇は一口含むと、ふぅっと一息つく。
「若さぁ・・・・一目ぼれしたんだってね」
「・・・・・・甄のことか」
先の戦で、曹丕は、正妻を娶った。そのことを、覇はさしているのだ。
「甄姫さんっていうんだってなぁ?・・・・・まぁ、若はいずれは魏王を継ぐんだろうしね。奥さんも子供もいるんだろうし」
「夏侯覇?」
「でも俺との仲も結構長いよねぇ。だって、初陣の前だからさぁ」
「何がいいたいのだ?」
「わかってるんだけど・・・俺、若のことあきらめられないんだよねぇ」
「なっ!!!」
茶を置いた小さめの円卓に椅子が二つ。一つの椅子が倒れるのと、曹丕の唇がふさがれるのは同時だった。
「むぅ・・・・・・んッ・・・・・」
椅子に体の動きを封じられ、自分よりも20?も背の低い夏侯覇をどけることすらままならない。散々口腔を弄られ、息が切れる程長い密着は曹丕の眉間にいっそうの皺を刻んだ。
「俺は、絶対譲らないから」
夏侯覇は無造作に曹丕の服の襟止めを引きちぎる。
そして露わになった白い肌に痛みを伴うほど歯を立て吸いつく夏侯覇に曹丕はくぐもった声を上げた。
「若を・・・・・曹丕を・・・・あんな傷モノに奪われたくなんかない」
体の小ささを気にして、普段から重装備な夏侯覇の腕の力は、曹丕の比になどならない。
そのまま寝台に倒されると、身長の差などあってないようなものだ。
「夏侯覇・・・!!」
「だ~め。しばらくあの女の元にはいけない躯にしてあげるから」
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